近くにある未知
2016年12月28日
少し前になるが、いとこの子供達を角島にサーフィンに連れて行った。
ロングボードでさえもその日の波は小さすぎてほとんどパドルだけをしていたら、思わぬプレゼントが待ち構えていた。
角島海水浴場の正面の岩場にパドルして行き、サーフボードをほったらかして岩上から飛び込みをしたりして楽しんでいたのだが、僕らの岩場のほんの少し沖の方に、ゆったりと3頭のイルカが泳いでいる!!
Jちゃんも、Tおばちゃんも小学6年生のSちゃんも、中学3年生のHちゃんも、野生のイルカをみるのは生まれて初めてだった。
まだ海水浴客がだれもいないぐらいの夏の初めのその日は、本当は水も肌寒いかもしれないので海は考えていなかったが、どうしても海で遊びたいとのSちゃんのリクエストで角島に出かけたわけだが、そのSちゃん本人は、海で泳ぐ体験自体が生まれて初めてというそんなタイミングで、いきなりイルカに遭遇で大興奮。
その日は、Sちゃんにとっては生まれて初めてのウニのにぎりを食べたり、みんなにとって生まれて始めてずくしの大騒ぎの1日になった。 柔らかい水の感触と広大な青色の広がりに心が高揚したままいつのまにか7頭ぐらいに増えたイルカのファミリーをいつまでも眺めていた。
サーフィン中にイルカと遭遇した体験は今までにたくさんある。
その中でも一番印象深い記憶は4つだ。
ひとつはニュージーランドでローカルサーファーと3人ぐらいでサーフィン中だった。
波のサイズも大きめだったその日、大きく広く続く海岸に沖の方からイルカの大群がものすごい勢いで接近して来た。 どういう反応をすれば良いのか戸惑っている僕らの周りを、あっという間に20頭以上のイルカの群れが囲っていた。 彼らは近づいて来た時からずっと興奮している様子で、とにかくスピードがものすごく速い。 距離的にはぶつからないか心配になるぐらいの(2メートル横ぐらいだろうか)ところを、僕らの真横をかすめるようにして何度も何度も水中を、または水面を、または、真横でジャンプしたりしながら通り過ぎては遠くへ泳ぎ去り、また戻って来て真横を通り過ぎる、という行動を10分ぐらい続けていた。 その後、またどこかにみんなはものすごい勢いで泳ぎ去って行ってしまった。
もうひとつは、地元長門の大浜でのサーフィン中。 早朝に僕が一人きりでサーフィンをして出会ったことが2度ぐらいある。 同じく夕方に一人でサーフィンしてて出会ったこともも1度ある。 3回とも、他のサーファーがいなかったからか、沖の方から本当にゆったりと歩くような感じで近づいて来た2頭のイルカのカップルが、ボードに座っている僕のまわりを、手で触れるぐらいの距離(1mぐらい横)を何周か回ってくれたのだ。 朝も、夕方も風もなく、穏やかに晴れた空が、それぞれ朝陽と夕陽が水面にぼんやりと桃色や橙色の光の帯を映しているような時間帯だった。
もうひとつは、二位ノ浜で一人でサーフィンしていた時のこと。 その日は波のサイズも大きめで、風も強く、普段は本当に透明なこのビーチも水は少し茶色く濁っていた。 普段、イルカ達が接近してくる時は彼らの丸い背中が特徴的にくるんと見えることでサメではないことがはっきりわかるのだが、この日は、僕が波待ちをしてボードに座っていた場所のほんの数メートル先に突然3頭ぐらいの黒い影が凄い速さで水中を移動するのを見たのが最初だった。 そのうち彼らはジャンプしたのでイルカだとわかったが、最初の速い影が視界を横切った一瞬は心臓がズキっと恐怖で凍り付いてしまった。 イルカだとわかったあとも、3頭とも大きめだったし、泳ぐスピードが速いし、あまりジャンプせずに、とても速く水中を泳ぎ回る連中だったので少しドキドキしたままだった。 自分が一人きりな上に、どこかで、本当にイルカなのだろうか、という疑念があったのかもしれない。
そして最後は、水中でイルカとにらめっこして彼らの会話を聴いた時。
大浜でKP君や他の友達何人かでサーフィンしていて、波待ちのときに、5頭ぐらいのイルカが目の前に接近してきた。 その日以前にも数回 こういう手が触れそうな距離でイルカと会ったことはあったのだが、いつもサーフボード上の水上から水中のイルカを見下ろしていたので、その前の月もイルカに出会ったあとで、「し まった。 今度出会ったら、水中に潜って、直接目と目をあわせてみたい」と、決心していた。 だから今回はすぐにボードを投げ出した。 そして透明な海に飛び込み、白い砂に太陽の反射がまぶしく輝く水に潜った。 手を伸ばせば触れる距離でゆったりと漂う何頭ものイルカたちと対面した。 そこには超音波のような鳴き声(話し声)が飛び交っている。 今までテレビや映画で聞いたこ とのあるこの声は特殊な集音機のセンサーでしか拾えない物なんだと思っていた。 水上では聞こえないけれど、水中では人間の耳できこえるのだ。 あきらかに知的な存在の彼らは、何を話しているんだろう? 小さな赤ちゃん?イルカが一頭僕の真下を泳いでいた。 オーストラリアでダイビングのライセンスは取ったがそれ以来ペーパーダイバーだ。 これをきっかけにダイビングを本格的にしてみたい、と一瞬思ってしまうぐらいの印象深い体験だった。
あとは、生き物との遭遇としてはマンボウが日光浴をしているところに出会ったのが一度、そして、一度はサメが自分の下を泳いで行ったこともある。 もう一つは、体長1mぐらいの巨大なタイが、素潜りで泳いでいた僕の周りを何周かまわるという不思議な体験もある。 この3つはまたの機会に書いてみようと思う。
やっぱり、僕が海で一番好きな生き物はイルカだ。 彼らに出会えた時は本当に非日常的な感覚になる。 意識というものを持つのが人間だけではないと確信できる瞬間でもある。 英語が国際語として世界中の人々とのコミュニケーションを可能にしてくれる。 同様に、僕たち人間がイルカ達と会話ができる日もきっと遠くない気がする。 彼らは海の世界のどんなことをぼくらに教えてくれるだろうか。