surfing blog 2021






2021年12月31日


仮想現実 VR 現実

(ハイテクとサーフィンの未来 pt4)  


そう遠くない未来のどこかの時点で、ブレイン+マシーンインターフェイス(人間の脳とコンピューターの直接接続)やAIの進化の結果として、

仮想現実の世界での経験が、現実そのものと全く区別がつかないものになる可能性は十分考えられるだろう。 

そこでは五感も忠実に再現され、水や風の感触や、痛みなども含めてすべてが”リアリティ”と何も変わらない。

もちろんサーフィンも現実世界と同じ感覚を味わえるようになるはずだ。

唯一の違いは安全性。 仮想現実なので溺れたり岩に頭を打ちつけて死ぬことなども、怪我などかすり傷ひとつ負うことも絶対にない。

それでは、100%完璧にリアルな感覚のサーフィンでしかもリスクはゼロの体験が実現された時、ほとんどのサーファーは現実世界から一人また一人といなくなってしまうのだろうか。

その日が来るまで確かなことは言えないが、僕はわざわざ現実の海に行く気がする。

もちろん僕だって怪我をしないように、死んでしまわないように気をつけてサーフィンをしている。

とはいえ、どんなにミスを犯しても何のリスクも負わないサーフィンに今と同じような興奮感動を味わえるのかというと疑問だ。

小さな自分の身体など一瞬で吹き飛ばされるエネルギーを秘めた波や地球の鼓動への畏敬の念、

底知れぬ深海や熱帯の海、北極、南極、あらゆる島への拡がり、未知の生き物や巨大な鮫やイルカや鯨、クラゲや色とりどりの魚達、そういったあらゆる美しい存在との繋がりを感じること、

そういうものこそがサーフィンなのだから。


とはいえ・・・そういうこと全ても含めて脳を騙せる機能があったらという観点はまたの機会に書いてみたい。










2021年1130


あなたのサーフボードは電動ですか?  

(ハイテクとサーフィンの未来 pt)  


さあ、あなたもブーストフィンを取り付けよう。


腕時計型のリモコンのボタンを押すだけで、時速16キロ(手でパドルする速度の2倍)のブーストがあなたをどんな波にもラクラクでテイクオフさせてくれるだろう。 大きなボタンは長時間のブーストでゲティングアウト向け。 小さなボタンは2秒間のクイックブースト用。 アプリで自由に、Short Boost 45%/12 Sec Long Boost 60%/20 Sec など出力やブースト稼働時間の設定ができる。

バッテリーは90分持つので1ラウンド使える。  

流体力学的に水の抵抗を極力抑えており、1キロ強と軽量な上に、ワイプアウトのショックにも耐えられる設計。 

フューチャーフィン、FSC、ロングボード用など、全てのフィンに対応するアダプターに本体を取り付けるだけで、SUPでもショートボードでもあらゆるサーフボードに使用可能。


Boost Surfingの創設者/CEOであるAlexei Ostaninは、カリフォルニアのハンティントンビーチのサーファーであり、肩の負傷のせいでパドルやテイクオフに手こずっていたが、工学の学位をもつ背景を活かしてこの電動フィンを開発した。

 

これ、キャプテンメモの冗談じゃなく、日本公式サイトでは2021年10月末発売と記載されてるガチの商品。 多分この手の商品の開発はいろんな人によって20年とか前からされていたはずだが、ここまでの実用レベルになるのは随分時間がかかったらしい。

まだしばらく長門市の地元では見かけないと思うけど、もし現行モデルよりもサイズが大幅に小さくなって水の抵抗が減らせれば、将来的には普通に使うサーファーが増える可能性はある気がする。

そもそもジェットスキーで引っ張るトーインサーフィンだって最初は何をやってるんだ?みたいな反応が多かったはずだが、人間がパドルで乗れるビッグウェーブの限界サイズをはるかに超えることを可能にした功績は大きいと思う。

同様に、このテクノロジーもいずれビッグウェーブのトーインサーフィンに代わるような使い方もされるかもしれないし、僕らの日常レベルでも、通常なら掘れすぎていてテイクオフできないようなヘビーな波にテイクオフを可能にするという意味で使う人も出てくるかもしれない。  初心者からプロレベルまで全てのサーファーにとって、今は乗れない波に乗れるようになったら、サーフィンそのものがずいぶん変わる可能性もあるのかもしれない。  

両腕などにハンディキャップがある人などもサーフィンが楽しめる可能性が拡がるというのは大きなメリットかも。

もう一つ、トーインサーフィンとは決定的に違う点は、トーインの場合はジェットスキーのロープを手放した瞬間からは、通常のサーフィンと同様に重力と波の力だけでサーフィンをするのに対して、このタイプのテクノロジーだと、サーフボードそのものに常時稼働可能な動力が加わるので、波の上で自在に加速できれば、やはりサーフィンのマニューバー(波の上での動き方)そのものを根本的に変えてしまうポテンシャルを持っているだろう。  今は絶対に出口まで抜けれない、あり得ない難易度のチューブの中を急加速してメイクしたり、どんなにタルくてスピードが出ない波でもスノボーのハーフパイプぐらい派手なエアーができるように進化するのかもしれない。 危険も増すだろうけれど・・・

ただし、ショートボードに採用するならやはり今よりかなり軽量化して水の抵抗を減らす必要があるのでそこは難しいかもしれない。

僕自身は使いたいと思うだろうか。 何となく直感的に「俺は要らないよ」と言いそうな気がする。 なんか大切な感覚が失われるような気がするから。 でも、ゲティングアウトは楽だろうなあ笑 デッキ面にソーラーパネルを装着するとかすればバッテリーも何時間も持つかもしれないですね。

僕はハンググラインディングもするのだけど、なんの動力も使わない機体が好きだ。 エンジン付きのモーターハンググライダーとかは好きになれない。

基本的に、futuristicなものは好きな方だけど、僕自身のサーフボードには動力は要らない気がする。









2021年10月31日

SAMSUNG GALAXY SURFBOARD はその後どうなった?  

(ハイテクとサーフィンの未来 pt2)  




SAMSUNG GALAXY SURFBOARD とは、2016年ごろサムスンが開発した、スマホ内蔵のサーフボード。

興味がある方は、プロモーションビデオをYouTubeで観てください。


無駄に硬そうで重そうなショートボード。 デッキパッドよりも大きいスクリーン上に老人ケータイ並に大きな青色の文字で様々なデータが表示される。 

腕時計型にしないメリットとしては、ゲティングアウト中でもスクリーンを見れることか? 大会のヒートの最中だったら、岸から撮影してもらった自分のライディングの動画を再生して観ながらパドルアウトし、分析することが可能かもしれない。 ラインナップに戻ったら即テイクオフできるし、波待ち中はできるだけ常に海を観察してセットが入るのを1秒でも早く発見したいのかもしれない。

動画の中ではガブリエルメディナが海にいて、岸からコーチのお父さんがスマホに指でメッセージを打ち込む。

内容は、「もっと力強くリップを叩け」「今だメディナ!」→このメッセージを読んで「よし今か!」みたいにエアーを決める。

その後も「俺たちがついてる」「いけチャンプ」みたいな言葉で応援する。

2分ぐらいのこの動画、ガブリエルメディナ親子の演技や設定が、ロバート秋山のクリエイターズファイルかと思うぐらい笑ってしまうが、製作側としてはガチで画期的な発明という位置付けだ。 

「プロサーフィンの世界に大きなインパクトを与える」という言葉で動画は締めくくってあるが、5年経った現在まで開発が順調にはいっていないのか、今年の夏のオリンピックでも老人ケータイサーフボードを乗りこなすサーファーはいなかったようだ。

とはいえとはいえ、先月の僕の話なんかも結局同じような発想で、確実にそういうことを海に持ち込もうとする人々が日々開発に力を入れているのは間違いない。 

波待ち中に、サーフボードのデッキにビルトインされたスクリーンでゲームするやつ、ぜったいいそう。

さらには海の中にいながら大きなスクリーンでリモートの会議したり、FXや仮想通貨、金融商品などの取引をしたり、ビジネスマンサーファーが仕事を海に持ち込むのかもしれない。 古き良き平和と静けさを求めて、デジタル機器は禁止のビーチとかもできるかも。 

20年後のサーフィンはどうなっているのだろう。









2021年9月30日

ハイテクとサーフィンの未来 


自分のサーフィンを、オートパイロット(自動航行)のドローンでの撮影を起動する。 

サーファーは海の中で波まちをしながら、スマートウォッチ的なモニター付きデバイスで、たった今乗った波の自分のライディングに対するフィードバックを確認する。

教科書的な身体のフォームAと、自分の身体のフォームBを重ねて表示した動画に合わせて、AIの分析結果の解説を聴く。

「マジスカ?サーフィン向いてないですね。やめたほうが良いんじゃないですか?」とか言われる毒舌モードも、OFFにできる。

一通り解説を聞いた上での次のライディング中にはリアルタイムでアドバイスを声がけしてくれる。

「右足荷重!」とか、「左手のリード!」とか叫んでくれる(叫ぶとかはボリュームの問題だが、ささやかれても聞こえないので)

「ぶわっはは!その顔で合ってます?」とかは貴重な意見だがOFFにできる。

サーフボードにビルトインされているセンサーで、足の裏の荷重も正確に分析され、体重移動とビデオ撮影のフォーム解析と合わせて総合的にライディングの修正が可能。

一本乗るたびに前回とどう修正されたかがわかる。 さらにどういう体重移動を試した場合、どういうふうに逆効果になったなどもその場で教えてもらえる。  

エレクトロニクスとは無縁のサーフィンだったが、今ではGoProが身近になってるし、こんな未来が来る可能性もあるかも?

サーファーの人数分だけのドローンが上空をブンブン飛んでて、海の中そこらじゅうでパーソナルトレーナーAIが怒鳴り散らしてる光景も微笑ましいですね。 「おー!(怒)今の行けよ〜!」とか。

みんなが、褒めて伸ばすモードをONにしてたらそこら中で30人ぐらいのAIが

「カノアになれる!」とか

「もはやカノアと同じじゃん!」とか

「いま顔がカノアに似てた!」とかかも。










2021年8月31日

youtube時代のプロサーフィン


youtubeの登場後はプロサーファーという肩書きは意味を持たなくなった。

昔はプロの資格を取ってしまえば「どうも!プロサーファーの***です」

みたいに肩書きだけでもカッコつけることができた気がする。

でもYouTubeが状況を変えた。

今はごまかしが効かない。 


たとえば、某リアリティ番組に出ていたある”プロサーファー”の例。

ウィキぺディアの情報では

「プロサーファー+ファッションデザイナー+ クリエイティブディレクター+ DJ」との記載。

 YouTubeで検索すると、


「サーフ界を超越したスーパースター」

独自のライフスタイルと多彩な才能を持つプロサーファー****による3/22湘南フリーセッション 


という説明の動画が最初に出てきた。

腹~胸ぐらいの波で、プロとしては平凡なライディングをドヤスローしてあった。

この人がヘビーな波でサーフィンをしてる動画はyoutube上には無かった。


こういうのもあれば、Wave of The Winterで優勝した松岡慧斗の、見るだけで背筋が凍るパイプの究極ライディングなども同じYouTube上にある。 本物のスーパースターがどちらかはyoutube で動画を見れば誰の目にも明らかだ。


同じ ”プロサーファー” という呼び方で括るにはピンキリだ。

youtubeは、カッコだけのショボい”プロ”達を淘汰する。(サーフィンの未来のためにも、そうであってくれ!)

そして本物のプロサーファー達だけが生き残る気がする。


プロサーファーってなんだろう?

プロって、僕たちアマチュアとは天と地の差で、ライディングで魅了してくれる選ばれしアスリート達のことだと思う。

僕には夢の中でもできないようなことを追求してくれる存在でいてほしい。










2021年7月31日

カノアの銀メダル



五輪史上初、新競技として採用されたサーフィンの大舞台。 アメリカ人としてのアイデンティティーとの狭間で悩んだはずの五十嵐カノアは日本の国旗を背負って金メダルを獲ることを目指した。 何年か前に初めてCTで戦い始めたカノアを初めて観た時の僕の感想は、トップレベルになれるのかはわからないな、という感じだった。 そんな僕の見る目のなさと疑念は気持ちよく吹き飛ばしてくれて、今のカノアは、世界の頂点のサーファーたちとメダル争いをしていることが相応しいサーファーだった。


台風8号の波に恵まれた千葉のビーチでは一般サーファーにはヘビーでパワフルな波が迫力たっぷりのブレイクをしていて、生まれて初めてサーフィンを見るような人たちにもサーフィンがどういうものなのか知ってもらえるという意味でとても嬉しかった。 ほぼフラットのたるいヒザ波でサーフィンしている姿を見てもらうのとはわけが違う。


セミファイナルでは開始早々数秒以内にガブリエルメディナはいきなりのフルローテーションエアーを単発でメイクし8.33を叩き出す。 わずか数分経過時点では、ヒート開始から4本乗ったうち3回のフルローテーションのメイクでトータルスコア16.76とリードをどんどん広げていく。 カノアは割と平凡なエアリバースとターンで7.67を出したきり、カラプトフリップを失敗したりしながらまともなスコアは出せず時間は無慈悲に過ぎていく。

開始後25分以上が過ぎ、観ているこちらとしても「もう無理かな・・・」と思ってしまった。

そんな時にカノアはヘッドオーバーの波でフルローテーションエアーをメイク。 スコアは9.33!。 このスコアで逆転になったことに海外ではジャッジが不正だったという声も上がったが、(実力的にガブリエルメディナが勝ち上がるのが順当だと考えるファンは多かっただろうことは否めない)

とはいえ、僕的にはガブリエルメディナのバックサイドフルローテーションエアーよりもカノアのフロントのフルローテーションの方が難易度が高かった気がするのでこのスコアは納得だった。 この状況でこのプレッシャーでこの大技をメイクできるスキルとメンタル。 カノアは本物だった。

もともと波を読む力はケリースレーターとかの次元に達しそうだったが、レールワークも超一流になってきている気がした。 エアーに関してはブラジリアンやジョンジョン達と比べるとスケール感が小さいような感じだったがその差も縮んできているようだ。 頭の良さと試合の駆け引きのうまさは強みだし、数年以内に世界チャンピオンになれるかもしれないと期待が高まる。


残念だったのはファイナルでのイタロフェレイラとの戦い。  カノアがセットの最大のレギュラーの波を3回か4回乗ったが全て水抜けがめちゃくちゃ悪くてスピードに乗らない波。 たるくてエアーも狙えないのでろくにターンすらせずにプルアウトを繰り返していた。 イタロはレギュラーには一切乗らずに、少しインサイド気味のグーフィーの波に次々に乗りスコアを伸ばしていくのをカノアが気づいていないわけがない。 それなのになぜ頑なにアウトで同じようなレギュラーのセットを待ち続けたのだろうか。

岸ではコーチの大野マーがイタロの方に移動しろとジェスチャーを繰り返していたがそれを聞き入れる様子はなかった。

彼のようなインテリジェンスを持ったサーファーが僕みたいな素人、まさに僕みたいに波が悪いところに居続けるようなミスを犯すなんてあり得るのだろうか。  パーフェクトな機械のように正確で、いとも簡単にハイスコアを連発してくる天才イタロを倒す戦略がカノアにはあったはず。 滅多に入らない波だが、セットを待ち続けてレギュラーの良い波が掴めればセミファイナルの時のように9点台を叩き出せるはずだとカノアは信じていたに違いない。 ヒート中に2回か3回はそういうセットを掴めるという計算だったのだろう。

そこは本当に運の世界かもしれない。 もし2本だけでもカノアが狙っていた波が本当に来ていたなら、トータル17点台とかを叩き出して金メダルを獲得したカノアの戦略に世界中が湧き、インサイドで忙しく慌てふためいていたイタロが未熟だったという評価になっていたかもしれないのだ。


そんなカノアが実際はどれほど海と会話ができるサーファーなのか、もう数年後まで彼を追い続けることで判明することだろう。

サーフィンの歴史に残る初代のメダリスト、栄光の銀メダルに笑顔を見せなかったカノア、悔しさが彼をどこに導いていくのか楽しみに見守りたい。 



追記 

その他の記憶に残った場面。 コロへアンディーノがジョンジョンフローレンスとのヒートで海に入る瞬間に、

コーチ Have fun brother! (楽しめよ!) 

コロへ Thanks! (ありがとう!)

と、お互いに爽やかな笑顔で会話していた。 オリンピックだろうがどれだけ大舞台だろうが、アメリカ人のエクストリームスポーツのアスリートの精神は根本が楽しむことなんだろうな。「ぐんぶぁれよ!!」と日本人の僕ならこぶしに力を入れて叫びそうな場面だ。 

イタロは金メダル確定の瞬間に仲間の肩に担がれながら、天を仰ぎながらObrigado(ポルトガル語でありがとう)と何度も叫んでいた。 










2021年6月19日

のぼるくん



僕の兄貴的な人「のぼるくん」が今日、湘南でサーフィンを始めたらしい。

以下は興奮冷めやらぬうちに送ってくれたメッセージ。

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「サーフィン🏄‍♂️めちゃ面白いね!」


「こんなに楽しいとは、、、」


「まじ、最高!」


「なんか、はまりそう」


「いつか一緒にサーフィン🏄‍♂️できたら最高だねー、、笑」

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だそうです!


みなさんは人生初のサーフィンってどうでしたか?

生まれて初めてサーフィンに行った日の感想って千差万別ですよね。


いきなり「世界にこんなに楽しいことが存在してたんか!?」みたいになっちゃってハマる人とか、

思い通りにできない悔しさで、ホントに腹が立ってリベンジとか言いながらハマる人とか、いろいろだと思います。


僕の場合はサーフィンを教えてくれる知り合いとかは誰もいない環境だった。 オーストラリアの知らない街に引っ越して、初めて行ったサーフショップで安物の中古ボードを買って、店員からザッとパドルの仕方とか教えてもらって、その数日後の日曜日に自分の部屋でウエットに着替えて、裸足でボードを右手に抱えて、ひとりで歩いてビーチに行った。(アパートから徒歩2分ぐらいだったので)

嵐みたいに海が荒れてる日だった。

サーフボードの上でパドルをするサーファーというのは、巨大な客船とかでもなく、フェリーとか釣船とかでもなく、自分の身長とそんなに変わらない小さなサーフボードにむき出しの生身で乗ってるだけのたよりない姿だ。

人生初でパドルもぜんぜんフラフラで、生まれたての子亀のようによちよちと海に漕ぎ出すと、ドンブラドンブラ揺れている海面の上に、小さな木の葉みたいなちっぽけな存在の自分が浮かんでいた。 不気味に時化ている海の大きなウネリで、波頭と波の底の「山と谷」の高低差に自分の身体は隠れてしまい、20m先の海面が見えないぐらいだった。

僕はこの体験に感動した。

今まで生きてきた世界では感じたことのなかった地球のエネルギー。 未知の世界に自分が翻弄されていることに興奮して嬉しくて心が踊った。

ある意味、この瞬間から人生が狂ったとも言える。笑


のぼるくん、サーフィンの世界へようこそ!

仲間入りですね!










2021年5月31日

サーフボードの見た目で気分は変わる?


生まれて初めて僕がサーフィンを始めたのはオーストラリアのボンダイビーチ。

そして人生初のサーフボードは、海沿いのショップで130ドルぐらいで買った中古のタウンアンドカントリーの6フィートぐらいのショートボード。 

その3ヶ月後ぐらいに僕はそのサーフボードをスプレーで真っ黒にペイントした。

当時は自分で色を塗ったり落書きをしたりするサーファーがそのビーチにはいなかった。 

ボードのメーカーとしても、サーフボードが太陽光の吸収で熱を持ってしまい剥離を招く恐れや、ワックスが溶けるなどの理由で、特に黒色のサーフボードというのは販売していなかった。 シェイパーの人に話を聞いても黒は良くないとアドバイスされたりした。 

そんなわけで、自分が好きな色に塗ったのはいいけど、なんだかやっちゃいけないことをやっているんだろうか、という罪悪感も少しあった。

黒いサーフボードに乗るヘタクソな日本人サーファーとしては結構それきっかけで話しかけられることが多かったのでラッキーな面も。

それから今まで黒いサーフボードを5本ぐらいはオーダーして作ってもらったかな。 自分でデザインした宇宙人を描いてもらったり、表は黒だけど、裏面にレインボーの模様を入れてもらったり。  一番気に入ってたのは、表は真っ黒だけど、裏がストロベリーチョコレートっぽいピンクで、中心に白い宇宙人が入ってるやつ。 マジックボードでめちゃくちゃ調子が良かった。 そのうちグリーンとかレッドとかイエローとかの派手なボードにも乗ってみたい。 もちろん白いシンプルなボードもカッコいい。

気に入ったボードが手に入った時の気分は遠足の前日の小学生状態だ。












2021年4月30日

ミラーニューロン

ミラーニューロンとは他人が行動するのを見ている時にも、自分が行動している時と同様に活性化する神経細胞のこと。 鏡のように、他人の行為を自分のものとして脳内に再現することから、ミラーニューロンと呼ばれる。 ただし、この細胞は自分自身にまったく経験のない物事に対してはそれほど強くは作用しないらしい。

僕たちサーファーだと巨大な波でのサーフィンのビデオを見るだけで手に汗を握るというかゾッとするというか、リアルな恐怖心が湧くし、ファンウェーブでの華麗なアクションを見るとやはり脳内で自分の体験のようにドーパミンが放出されて気持ち良くなる。 スポーツ科学的には、自分より少し上手な人を見るぐらいの方が脳内での再現がされやすく上達につながりやすいらしい。

つまりジョンジョンフローレンスを見るよりは日本人のプロを見る方が理にかなっているということか。

とはいえ、上達目的には確かにそうかもしれないけれど、動画を見て楽しくなるのはやっぱり世界のトッププロだ。 彼らがメチャクチャすごい技をメイクすると、やり方のテクニックは難易度の次元が違いすぎて情報を処理しきれず僕の脳内に何も再現されないが、達成感は再現してくれて快感を味わうことができるということらしい。 おかげさまで、そうやって繰り返しすごい映像を見てばかりいると、そのうち自分にもできそうな気になってくる。 ミラーニューロン の作り出す幻想に乗せられて夢を見るのだ。












2021年3月31日

ビーチは動きまわれ!

サーフィンを始めた頃に先輩にいつもそう言われていた。 お前は頭がかたすぎて、同じポイントに居座りすぎると怒られた。

ポイントブレイクのリーフだったら水中の岩場の形に影響されて波が崩れるのでテイクオフするべき場所は基本的にいつも一定だ。 それに対して一般的な海岸では水中の砂がどんな状態にあるのかは、海がしけるたびに様子は変わる。 ある日はビーチの右奥アウトで最高のライトの波が崩れているとしても、次の週にはビーチの左端のインサイド気味にコンパクトなレフトの波が現れるかもしれない。 それどころか、同じ日の同じビーチでさえも、さっきまでど真ん中に水抜けの最高なチューブの波が巻いていたと思ったら、潮が満ちてくるにつれて、遥か沖の方に形の良い最高にファンウェーブな波が崩れ始めたりする。 うねりの向き、風向き、潮の満ち引きなどの変化、それらの要素との水中の砂の地形との相性。 そういう要因で波の良し悪しはどんどん目まぐるしく変わるのだ。 上手になるサーファーの資質の一つが、こういう変化に敏感に移動しまくれること。 僕にはそれが欠けている。 つい、自分が気に入ったブレイクを見つけると、いつまでもそこで同じセットが入らないか待ち続けてしまう。 周りの仲間はどんどん新しいポジションにパドルして行ってしまうのだが、僕だけは同じ場所でずっと待ち続けている。 さっきまでみんなが最高のライディングを繰り出して盛り上がっていたポイントには僕だけが残り、たまに入る波に僕がテイクオフしても短いライディングですぐにプルアウトして終わり。 その横50メートルずれたところに新しくブレイクし始めたポイントから移動して行った仲間が歓声を上げながらどんどん良い波に乗りまくる。 それを見ながら別に俺は気にしてないよ、みたいなそぶりで僕はマイペースを貫く。

完全に一本も波が入らず、ピタッと止まる場合はさすがの僕でも気づいて移動するが、通常は完全にダメになるというよりは良い波が入る間隔がメチャクチャ長くなったり、または波質が徐々に悪くなったり、結構わかりにくいのだ。 それぐらい、100本波が来れば100種類の波質で、良いものも悪いものも混ざってくる。 その100本中に30本良い波があるなら最高で、みんながそのブレイクを狙うのだが、僕の場合は100本中、5本でも良い波がくるとその場を離れられなくなってしまう。 僕のこういうセンスのなさはずっと変わらない。

ふと思ったが、人生も似たところがあるのかもしれない。 ただし、人生の場合はそこが移動するべき場所なのか、もっと待ち続けるべき場所なのかの判断はサーフィン以上に難しいかもしれないが...










2021年2月28日

ワーキングホリデー

18歳以上30歳以下の人に、一年間程度(延長あり)働いたり旅行したりしながら滞在することができるビザが発給される制度。

この制度を使って各国でバイトをして「サーフィンホリデー」をしながら世界中を旅して周る。高校や大学卒業時に進路を悩んでいる人などには夢のような可能性がここに広がっているような気がする。

僕自身もオーストラリアとニュージーランドの二カ国でワーキングホリデー(サーフィンホリデー)を二年間したのだけれど、(その後のハワイオアフ島は観光ビザで6ヶ月住んだ)18歳から30歳まで12年間ぐらい、遊んでばかりじゃなくちゃんとバイトをしながら過ごせば、ぶっ通しで連続12カ国に滞在するパターンもありだ!

自由な発想で文化や語学を吸収しながら十二年間を過ごせば人間的にも大きく成長できるかもしれない。

提携国は以下の26ヵ国。(2021年3月現在)

英語圏

  • オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イギリス

アジア

  • 香港、台湾、韓国

ヨーロッパ

  • ドイツ、フランス、アイルランド、デンマーク、ノルウェー、スロバキア、ポーランド、ポルトガル、オーストリア、ハンガリー、スペイン、チェコ、アイスランド、リトアニア、スウェーデン

  • エストニア、オランダ

南米

  • アルゼンチン、チリ











2021年1月31日

サーフィンに行きたくない

「明日はxxxxビッグウェーブポイントに一年ぶりのデカい波が来そうだよ」とYD君から連絡が入った時、僕は緊張で胃が締め付けられるような感覚になった。

最近の僕は残念ながらフィジカル的にもメンタル的にもベストのコンディションからはほど遠く、ビッグウェーブでサーフィンしたら死ぬ思いをする(大袈裟じゃなく)自信しか無かったからだ。

一度は断ったのだが、YD君にさらに強く誘われて「考えておくよ」と言ってごまかしたが、内心は行かないつもりでいた。 それでも一日中ちょくちょく思い出してはどんよりとしていて、夜眠る時までずっと暗い重い恐怖感の重圧に苦しめられていた。

無謀なのと勇敢なのはぜんぜん違うぞ、自信が無いのに無理矢理自分を騙して海に挑んでも大怪我したり死んだりするだけだ。 20歳ぐらいのイケイケなバカじゃあるまいし、経験豊富な大人のサーファーとしてしっかりと判断して今回はやめておこう。

ベッドの中で最終的にこう決断した途端に心の中にすうっと光がさしたように楽になり、

脳内から幸せ物質が放出されたのを感じた。

は〜!安全がいちばんだなあ。とあたたかい安心感に包まれて眠りについた。

次の日。

YDくんへのラインでは「考えておく」とは言いながらも、本音の「行きたくない気持ち」はメッセージの文面にわかりやすく匂わせておいたので、察してくれるだろう、そっとして置いてくれるだろう、と思っていたのだが、YD君から波情報が入った。 朝からずっとチェックしていたのだがウネリの向きも良くないしサイズもそこまで上がらなかったので今日はできないかもしれないとのこと。

何とも言えない安堵感に包まれながら、

「残念だね、でもなんかホッとした俺がいる」と伝えると「マジウケル」と笑われてしまった。自分でもビビり方が情けないのがまじウケると思ったけれどでもやっぱり嬉しかった。

ああ!フラット最高!(*フラット=波が無い状態)

ああ!安全第一!

なのに...

午後2時過ぎ

YD君からふたたび連絡

「ウネリの向きも変わってサイズが上がってきたし潮回りが良くなってブレイクし始めた。やろうや!」

とのこと。

ち〜ん...死んだな、と思いながら準備。

まあボード&ウエットだけ車に積んで現場に行って波チェックしたフリをしてからUターンして帰って来ても良い。そういう逃げ道も恥ずかしがっちゃダメだ、みたいなことを心の中でぶつぶつ呟きながら。

ポイントに着くとYD君のリポート通りそこまで大きくは無く、このポイントでギリギリできるサイズという感じ。 とはいえここはビッグウェーブポイントだ。 不調の僕なら一本でボコボコにされるのは目に見えている。

でもセットが入り、波が崩れ、先に海に入っていたYD君やITO君が良いライディングをするのを見ているとやっぱり僕もサーファーだな、波に乗りたい欲望がムクムクと湧き上がって来てちょうど恐怖と50/50ぐらいになった。

モゾモゾとしながらもフルスーツのウエットに着替え終わると、なんかのスイッチが入るのはいつもながら不思議なものだ。 ブーツも履くとさっきよりも戦えるような気分になる。

ガンダムのモビルスーツみたいだな。

ボードに塗るワックスの真冬らしいゴリゴリいう音と、はるか遠くのラインナップの波のゴオ〜と崩れる重低音が重なる。 ちょうど沖を見ていたらパドルアウトしてる途中のYD君の沖にヤバそうなセットが来た。 数本の波の入った位置に対して彼がいたポジションはインサイドすぎて振り返ってから十分にパドルをする距離が取れない位置だ。 普通だったらあきらめて波をやり過ごすべきだった。 目の前で崖のように牙を剥く大波が迫る。 彼は岸の方に振り返ると数回だけパドルをしてテイクオフを試みた。 波が急激に切り立ち過ぎて、彼の身体が伸びてワイプアウトしてぐちゃぐちゃに揉まれている...

恐怖で自分の胸の動悸が聞こえるようだった。 この時点でやっぱり帰るという絵を想像してみたが、海の二人は僕が一旦着替え終わったのを見ていたはずだ。 ウエットに着替えたあとで逃げ帰ったとなれば伝説に残るし、もうここまで来たら仕方ない。 ラウンドピンテールのセミガン6’11”を腕に抱えて小走りで海に向かった。 車から海の岩場までの3分ぐらいのランニングは長いのか短いのかわからない時間だった。 身体は十分に暖まった。 少しストレッチをして覚悟を決めて岩から海に飛び込みラインナップへとパドルした。

海全体が大きくうねる巨大なエネルギーに翻弄されながら漕ぎ続けると、遥か遠くでYD君とITO君がセットの波をロングライドしているのが見えた。

そうこうしてるうちに二人といっしょにセットを待っている僕がいた。

そこからは、セットが入るたびに恐怖と戦いながら波を追いかけたり逃げ回ったり、一本も乗れないままで時間は過ぎていった。 自分の位置より沖にデカいセットが来ると一瞬ボードの上に立ち上がって飛び込んで水中深くに潜って避難するというのは何回も繰り返していた。 スキルが足りない僕の場合はこのサイズの波にドルフィンなんて効かないのでこれしかない。 このレベルのパワーの波でドルフィン失敗すると水中でとんでもない体勢でボードといっしょに叩きつけられたり大怪我につながることがある。

予想してはいたが、やはりこのラウンド2時間半ぐらいでたったの1本しか乗れなかった。 (正確には一本も乗れる自信が無かった)

その一本だが、テイクオフはギリギリでメイクできたのはラッキー。 ボトムに降りる途中ですでにフェイスの面の硬さと凶暴なパワーが両足から全身に伝わってぐらぐらに揺さぶられアドレナリンで脳が痺れた。 すごい刺激だ。 気持ち良い半分怖い半分。

ボトムターンをするスキルも余裕も無くてセクションを抜けられず、真っ直ぐ降りた時点で分厚いリップが落ちてきてゴジラに軽自動車が吹き飛ばされるみたいにワイプアウトした。 ぐるぐる巻きでボードにもぶつかりかなり苦しかったけれど、無事に浮上。 ふらふらしながら数分かけてラインナップに戻っていくとYD君とITO君が笑顔で迎えてくれた。 デカい声で「最高!」と叫びながらその瞬間を噛み締めた。 ああ!やっぱり気持ち良い! とはいえこのあとは1時間ぐらい一本も乗れず、日が暮れる前にYD君のボードが真っ二つに折れてしまったので、僕もITO君もいっしょに上がった。 この時YD君はボードが折れた後、岸に戻るのに川のような流れにつかまってかなりてこずったらしい。 いざと言う時にどのルートで岸に上がるべきか、流れが早いときには、折れたボードに乗ってパドルするのは進みにくいので、リーシュでボードを引きずってクロールするべきか、それともボードは捨ててクロールするべきか、

それとも体力温存で平泳ぎをしながら流から脱出するように横切るべきか。 最終的にテトラポットが待ち構えている場所に捕まってしまえば波にたたきつけられて死んでしまうかもしれない。 かといって岩場の真ん中から上るのも同じ位危ないだろう。 どうやってサバイバルするべきかそういうイメトレを海から上がった3人は色々と話し合った。

今日のコンディションはこのポイントのビックウェーブとしては一番小さい部類に入るとはいえ、それでもやはり安全対策は真剣に取り組まないといけない。 やはりたった1人でこのポイントに入る事は避けるべきだと思う。 信頼できる仲間と助け合えることは絶対必須だと思う。

怖い思いをしながらギリギリの精神状態で本当にギリギリ1本だけ乗ることができたこの日のサーフィンだったが、こうやって無事に戻って来れた今振り返ると、入って本当に良かったと思う。 あの1本がどれだけ大きな興奮と喜びをくれたか。 サーフィンってすごいなぁと心から思う。

このポイントの僕にとってのアルアルは、波がなくてサーフィンできないときにはあーあのポイントでデカい波でやりたいなぁ!とか言うくせに実際にビッグウェーブが来たときには当日になると気持ち半分は行きたくなくなるのだ。

感動と恐怖はいつも表裏一体だ。

2021年1月 当教室講師キャプテンメモ この日たった一本乗れた波 

この直後に右上頭上から落ちてきている分厚いリップに叩きのめされて、メチャクチャにされた。  

長門市のサーフィン 





ITO君




YDくん





サーフィン写真






サーフィン用語

ノーズ サーフボードの先端

テール サーフボードの最後尾

レール サーフボードの横の部分(この部分を沈めてターンする)

フィン ボードの裏のサメのヒレのような部分(これもターンに使う)現代のボードは通常3つある(昔は一つだった)

ターン 方向転換のこと (緩やかなターンから急激なものまで)

パドル 波の崩れる沖合までクロールのようにこいで移動すること

ドルフィン 沖にパドルアウトする時に目の前で崩れる波をイルカのように潜ってやり過ごす技

レギュラー 岸から見て右から左に崩れる波

グーフィー 岸から見て左から右に崩れる波

ブレイク 波の崩れ方、崩れること

ショルダー 波の斜面の今から崩れる部分

ボトム 波の一番下の底の部分

トップ 波の一番上の部分

アウトサイド 岸から遠い沖の方

インサイド 岸に近い波打ち際の方

テイクオフ 波を捕まえてサーフボードに立ち上がる動作

カットバック 波の上を走っている最中でUターンをして戻ること

パワーゾーン 波の力が一番強い部分

ライン 波の上の自分が走るコース、そのコース取り

360 走っている最中に360度の水平方向の回転をすること

リップ(オフザリップ) 波のトップでの急激なターン

ドライブターン 脚力、遠心力、高度な体重移動の技術を使って、水中に深くレールを入れて、大きく加速していくターン

カーヴィング 波のトップでレールを深く水中に入れてドライブターンすること

マニューバー 波の上ですべての技術を使ってボードコントロールを行い、思いどおりの動きをすること あらゆる技の総称

メイクする 技を成功させること

エアリアル フルスピードまで加速して、波のトップから空中にジャンプする技の総称

チューブ 波の崩れ方によっては空洞になりトンネルのような土管のような部分ができる

このチューブに入り、そしてメイクすることはとても高度な技術を必要とする

ワイプアウト 波に乗っている時に転倒してしまうこと

パーリング テイクオフを失敗して落下すること

掘れる 崩れる波の斜面が急激に切り立って角度が直角に近くなること こういう波はテイクオフが難しい

たるい 崩れる波の斜面がとてもゆるやかな波のこと

刺さる テイクオフの瞬間やターンの直後にノーズが波に突き刺さること

セクション 波のある一部分 または進行方向の数メートルの範囲

フローター 進行方向の波が一気に崩れるセクションで崩れるトップを無重力で滑るように横に走り抜ける技

前が落ちる 波の進行方向、自分の目の前の波が崩れてしまうことによって、それ以上横に進めなくなること。 それ以降は真っすぐ岸に向かうことしかできないので、その場でライディングをやめたりする