なんで働くの?

2020年10月17日




「お金に余裕さえあれば、一生就職なんてしないで遊んで暮らしたい」

学生のみなさんからそんな声を聞いたことがあります。

冗談半分でしょうが、もしそんな生き方を本当にしたら、それで幸せになれるのでしょうか。

現代社会の中では見えにくくなっていますが、私たち一人一人は生き抜くために毎日栄養のあるものを食べて、安全な場所で眠らなければならない生きものです。

昔、昔、おおむかしの原始時代には命懸けでマンモスを倒して肉を食べ、凶暴な野獣から身を守るために洞窟に隠れて眠ったのですが、それから何十、何百万年後の2020年の私達の存在も基本は変わりません。

もし仮に身体ひとつで漂流してたどり着いた無人島で、たった一人で暮らさなければならなくなった場合を想像してみましょう。

山からは、虫や野獣を捕獲しようとしたり、食べられる植物や木の実をさがしてみるでしょう。 海からは貝類や魚、食べられる海藻などを採取しようとするでしょう。

同時に飲み水も確保しなければなりません。

猟銃や罠も無しで野生動物を捕獲できるのか。 知識も無しに、食べられる植物と猛毒の植物を見分けることができるのか。 釣り道具や銛も持たずに魚を捕まえたり、空腹を満たせるだけの貝をどんどん見つけられるのか。 道具も無しで火を起こせるのか。 安全に飲める水をどうやって確保するのか。 きっと朝早くから夜遅くまで最大限の努力をしたとしても、これらを満足にこなすことはとてつもなく難しいと気付くでしょう。 しかも1日うまく行ったとしても、次の日から数日連続で失敗すればあなたはすぐに死んでしまうのです。

夏の猛暑や極寒の冬を凌ぐ家も自分で作ることになります。 怪我をしたり病気になったら終わりかもしれません。

このように、私たち人間は自分ひとりが生きるためだけに働いたとしても、一日中駆けずり回ってさえギリギリやっていけるかどうかなのです。 多くの人間は、自分ひとりで生き残りを求められるこのような状況下では簡単に息絶えてしまうことでしょう。

現代社会においては、人類全体が分業をして助け合っているからこそ、そこまで過酷なサバイバルに追われることなく生きていけるのです。 農家さんが野菜を育ててくださり、漁師さんが魚を採ってくださり、お医者さんが大きな怪我や重い病気を治してくださったり、病気のことを調べる研究者の方がいらっしゃったり、家や橋や道路を作ったり、電気を発電したり、自動車、エアコンや冷蔵庫を作る人がいらっしゃったり。 私たちの生活は本当に世界中の人びとと協力し合って成り立っているのです。

このことを忘れなければ、「やっぱり私も社会の一員として、誰かに役立つ仕事をみずから進んでしたい」と心の底から思えるのではないでしょうか。

自分の能力を最大限に活かして、社会における自分の役割を見い出すことは大きな喜びを与えてくれるからです。

自分の才能や個性に合った仕事で社会に貢献することは、社会的な動物である人間にとって、人生最大の幸せの一つです。

学校や家庭での日々の勉強もそのための準備だと考えれば一生懸命に頑張れるのではないでしょうか。