激流下り

    2010年1月16日    





何時間も続く大雨で、山口市の中心部を流れるふしの川は茶色く増水し、巨大で不気味な生き物のようにうねっていた。

今から10年以上前のある日、カナダ人の友人と僕は、2人でその激流を海水浴のレジャー用のゴム(というよりビニール)ボートで下ることにした。

僕がその日に全く突然思いついたその計画は、それでも、完ぺきに整った素晴らしいもののように思えた。

僕は友人に、誇らしげに説明する。

Okay, here's what we're gonna do: 

1)車で川の上流にゴムボートを置いてくる。

2)車で川沿いを小郡町の下流まで下る。

3)川沿いに走るJR山口線の駅に車は置いておき、電車で上流に戻る。

4)戻った上流の駅からは川まで徒歩数分だ。

5)ボートで川を下り、車を置いてある駅の近くで川から上がればゴール。

友人は一言 What're we waiting for?  Let's do it!


結果から言うと、We made it! 全て順調で、手作りのラフティングを楽しみ、途中で驚きの顔でこちらに手を振る川沿いの通行人に愛想を振りまきながらとても高揚した気持ちで無事帰還した。

流れの速い部分や、ゆっくりの部分や、開けている場所や、狭まったところ。 ジャングルのように背の高い草に囲まれた中を通るところ、河川公園の遊歩道を横 目に通過する所、住宅地が見えたり、橋をくぐったり、そして小さなダムのように段差がある場所を落ちるように暴力的に引き込まれる場所など、いろいろな表 情を見せる大きな川の流れに、僕らは興奮したまま竹かなにかの棒を使いボートの進路を操りながら新鮮な体験を味わった。

いくらか賢くなった今、振り返ってみると気づく反省点は・・・

1)ボートが安いビニール製だったので、何かに引っかかればすぐに破れていただろう。

2)救命胴衣を着けるべきだった。

3)ライフジャケットがあったとしても、ボートから転落した場合、川の段差がある場所など、滝のようになった部分に随所発生していた渦巻きの、水面下に巻き込む力がある場所に捕まれば、水泳力があっても浮上できなかった可能性がある。

しかし、この体験のあとで思いついた、いつかやってみたい新しい遊びのアイディアはこうだ。

1)身体一つにヘルメット、ひじパッド、ヒザパッドなど各種プロテクターとライフジャケットを完全装備して、さらにその上からウレタンか何かの、水に対して浮力のある、それでいてやわらかくショックを吸収する素材で全身を包む。

2)身体一つで激流に飛込み、下流まで流されるままにまかせる。

3)途中の岩にブチ当たっても、コンクリートに叩き付けられても、頭も身体も、ヘルメットやプロテクターの上からさらに発砲スチロールかウレタンなどで覆ってるので、ダメージは受けない。

4)どこかに発生してる滝壺で水中に引きずり込まれる場所があっても、浮力が強ければ沈んだままにはならない。

この計画を何人かの友達に話したら「ハハハ・・・」という意見だった。

どうも僕のアドベンチャーの相棒に選ばれたいな!と、心から願っている風でもないようで不思議だった。

実際、この計画は危ないのだろうか?

慎重に検証すると、気になるのは 4)だ。

川の激流で本当に水中に引きずり込まれた経験がない以上、それにどういう浮力で対応できるのか全く計算不可能なのだ。

「ハハハ・・・」