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2月25日


山本博也さんのナザレ挑戦


宮崎のサーファーで、2020年にナザレに滞在した経験を持つ山本博也さん

僕自身も何かの拍子にこの人の2020年のナザレ挑戦の動画を見たことがある。

「通常のナザレ」基準で言えば波が無い(小さすぎる)というコンディションだったので他にはサーファーがいなかったが、日本の僕たち一般サーファーの日常からいえば十分に危険なビッグウェーブが来る日にたった一人で海に入っていてすごいなあと思った記憶がある。 ハワイのノースショアと比べるとナザレは日本人にとって未到の地。 圧倒的に情報が少ないはずなので開拓者の一人としてこういう場所に挑戦をしていく何人かの日本人の一人だというのは偉大なことだと思う。 ジョーズなどにも挑んでいるビッグウェーブサーファーだ。


1年ぐらい前にドル君が初めてナザレのことを目標にした頃に、自身のビッグウェーブサーフィンの経験から先輩としてドル君にいろいろ指導をしたりしたこともある山本さんらしい。 その後、ドル君とはいろいろあったようで、お互いのファンを巻き込んで炎上のような状況になってしまっているようだ。


その山本さんがドル君の挑戦に奮い立たされて、ナザレに旅立ったらしい。

初日のコンディションは波がとても小さいようだった。 インサイドの波しか動画に写っていないが、インサイドで6−8ft(波の高さ3〜5m)だったらしい。 


「自分のサーフボードがポルトガルに持ち込めないトラブルもあり、使ったボードは借り物で、到着直後の疲れもあり、体力、メンタル的にも気持ちが入っていないままでパドルアウトしてしまった。」


結果はというと、波に揉まれた際に自分のサーフボードで脇を切ってしまった。 どうにか自力で岸に上がったが、 救急車で緊急搬送され、ライフガード、医療スタッフに迷惑をかけた。7針を縫って、抜糸は12日後、2週間はサーフィンできない。 一度日本に帰国しようか悩んだ。 だが、うまくいかなくても、怖くても、諦めない姿を、顧問としてサーフィンを教えている中学校のサーフィン部の生徒たち、息子たちや家族に見せたい。 自分の家族を泣かせて3年間貯めてきたナザレ資金、1ヶ月休んだ仕事、若いわけでもない自分にとって何度もないこのチャンスを逃すのは考えられない。 怪我から発熱しているが、治療期間中に体を鍛え、残りの2週間にかける。 滞在延長も考える。 今は怪我に負担のかからないトレーニングをしている。 


こういう内容のYouTube動画を公開していた。


「 怪我をして落ち込みそうになったり、悔しくてやりきれない気持ちもある。でも、エネルギーに変えて完全に復活して、納得いく一本を極める様に心も身体も鍛え直して精進します。諦めなければ、絶対にチャンスはある!そう信じて波を待ちます。だから皆んなも信じて見てください。応援よろしくお願いします。」


という言葉で締めくくられていた。


ドル君に始まりこのナザレという地で日本人が少しずつ大波への挑戦の一歩を踏み始めているのかもしれない。


ナザレ基準では本当に小さいコンディションでさえいきなりこの洗礼を受ける危険なポイントだ。

山本さんがこれ以上怪我をせずに納得の行く波に乗れて、無事に帰国できることを願いたい。

写真は山本さんのYouTube動画から。ナザレ滞在の初日。怪我をした日のサーフィン前。







2023年1月20日

ドル君のナザレへの挑戦はクリスマス前に無事に終わった。


4日目 小さくサーフィンせず

5日目 ザ・デイ(最高の波のコンディション)

セットを食らって打ち上げられた。

6日目

10mクラス 

この日いちばんクラスのセット食らったがジェットスキーに救出された。

いちばんアウトで待つ作戦でレギュラー1本(7m)?と、グーフィ1本乗った(5m?)

パドルではここまでに三日入って3本乗った。


ドル君の宿舎で仲間のビッグウェーバーが語っていた。

「通常のサーフィンは競い合って自分勝手になるスポーツだがビッグウェーブになるとそれが変わって、みんながチームで同じ目標に向かう。家族みたいだ。

ビッグウェーブでは海のエネルギーを感じることができる」


「スーパービッグデイにはトーインをやるのか?」と聞かれた。

「やる。」と答えた。

相当な金をかけてここまで来た。300万弱かかった。ここでいかないわけにはいかない。一生後悔する。ビッグウェーブに乗るためにここに来た。

ここでは全員が命をかけてます。


日本人の歴史に残るぐらいどでかいやつ行こうぜ。昨日は熱く冷静に語り合った。

ジェット二台 三台出す。 ビッグデイをやるにはレスキューが一台では足りない。 崖の上で監視する(トランシーバーで) 人は何人配置する?

ここで日本人の魂 ぶちかましましょう。

ビッグデイに巻かれたら命が終わる可能性も知ってる。


ところが、滞在期間の約1ヶ月の間で、最初の1週間だけ波が良かったが、そこからずっと大波が来なくなった。

最終日を直前に、少しだけうねりが入りそうな予報が出たところで「明日トウイン決行します。」と宣言した。


なんと、このタイミングで山中海輝さんというプロサーファーが 「日本人初!世界最大の波”ナザレ”にプロサーファーが挑戦。」という動画を上げた。

2〜3日の短期滞在で、5mぐらいの面つるの小波にトウインサーフィンをした動画だった。 ドル君が3日目にパドルで乗った波より一回り小さいサイズだった。

世界ではあの波をナザレに乗ったと言って動画を上げるサーファーはいないと思う。


山中プロの動画が上げられた翌日に決行と言っていたのにドル君の動画は上がらなかった。

もしかして狙った波が上がらなかったのか?と心配していたら、その翌日に待望の動画が上がった。


当日は7人でドル君をサポートするチームだった。


正直なところ恐怖に押しつぶされそう。

すでに何度か揉まれているから波の怖さがわかる。

初めて目の当たりにした命を賭ける恐怖。

我が命ナザレに預けます。

人生でこんなに夢中になれたものはない。

サーフィン界のエベレスト。

やるしかないね、そのために来てるし。

1年間ずっと恐怖に向き合って来た。


まだ薄暗い早朝に動画に素直な気持ちを残していくドル君。


正直恐怖と緊張で吐き気がやばい。

「命を賭ける」この言葉を何より考えた一年だった。

自分の生と向き合った一年。

あとは忘れ物がないようにして・・・

思い残すことは何も無い。

集中して頑張ってきます。


こんなセリフを残してドル君は海に出た。


結果はといえば、ドル君は次々にトウインで波のサイズを上げていき、ついに「ナザレの波の最小レベルの入門編」と呼んでも良さそうな波に乗った。 山中プロの倍以上のサイズで、リップの厚さ、水の量共にこのサイズからは大怪我や死亡事故も起き得る危険な波だった。


ドル君のライディングを見て興奮した。

鳥肌が立って、

感動で涙が出そうなぐらいだった。


サーフィン後のドル君の言葉。

みんなに感謝。

ワイプアウト時にストラップから脚を抜くタイミングをやらかした。 前足の捻挫。

デカい波のインパクトだったら足が折れてた。 自分の中ではホントに危なかったと思ってる。


山中さんという人も、プロだけあって限界値はドル君よりも潜在的に高いのだろう。 だったらその自分の限界に挑もうとするのかどうかという話だが、彼からはそういうものは感じなかった。 ここから他のプロも挑戦を始めるのかもしれない。 山中さんはどうだかわからないが、日本にも本物のサーファー達がいる。 そういう人たちがナザレに挑戦をしていく時代が始まるのかもしれない。

その流れを作ったのはドル君だ。  


以下はメインのジェットスキーを担当したAlemão de Maresias氏のこの日のトウイン後のコメント。

You’ll be the first Japanese to take the biggest wave in the world . When it’s big we must meet our big boss. My teacher Garrett McNamara. He’ll tell you if you are ready or not. We’ll figure it out.  

和訳:お前は世界一の波に乗る初めての日本人になるだろう。 波が大きくなったら俺たちのビッグボスに会わしてやるよ。俺の師匠、ギャレット・マクナマラだ。(ナザレの世界記録やジョーズのモンスターバレルなどで知られるビッグウェーブ界の第一人者で超レジェンド) お前の準備ができているかどうか、彼が教えてくれるはずだ。


ギャレットマクナマラの名前が出てくるなんて、本当に彼の本気をみんなが感じたのだろうと思った。


サーフィンの世界で自分自身以外のことでこんなドラマを経験したことはない。

ここまで本当に劇的だった。


以下は宮崎のアマチュアサーファー山本博也さんの言葉(2020年にナザレに滞在してパドルサーフィンを経験)

自分の内なる声がわかった。

日本でも世界でも誰よりも大きな波に乗りたい。

ドル君がやったことで刺激を受けた。

ドル君をビッグウェーバーとして誇りに思う。尊敬してる。

山本さんは、YouTube動画の中で「一番本格的にサイズが上がる来たる2月にナザレに行き、世界最大の波に乗る」と宣言。


このようにいろんな波紋を引き起こしたドル君の日本サーフィン界への貢献は大きいと思う。


これからはYouTuberドル君ではなく、ビッグウェーバー中川尚大として活動していくつもりだと言うドル君。 帰国直後の報告会では、ドル君と一緒に宿舎に滞在していたビッグウェーブサーファーの*Marcio Freireさんが、ドル君が日本に帰国した少し後の1月5日にナザレのトーインサーフィン中に亡くなったという悲しいニュースを告げた後1分間の黙祷を捧げていた。*(ブラジル人のウォーターマンMarcio Freireさんは、世界一のビッグウェーブポイントの一つJAWSにて、ジェットスキーのサポートも無し、インフレータブルのライフジャケットさえも着ないでパドルだけでのサーフィンのパイオニアとして、Shane Dorianなどからもリスペクトされていた)


お互いに死ぬかもしれないだけあって、ここの大波に挑戦するサーファー同士はリスペクトし合っているからみんな優しいとドル君は語った。

ビッグウェーブの世界で誰もが知るすごい人なのに偉ぶるでもなくドル君に色々親切に教えてくれた人格者のマルシオさんの死に対して最大の哀悼の意を表しつつも、そのことで改めて恐怖に駆られたような素振りはなく、ドル君の目はこれからの挑戦が待つ未来をしっかりと見据えているようだった。


ナザレ挑戦最終日のドル君こと中川尚大さん    ドル君のYouTubeより










サーフィン写真





サーフィン用語

ノーズ       サーフボードの先端

テール      サーフボードの最後尾

レール      サーフボードの横の部分(この部分を沈めてターンする)

フィン       ボードの裏のサメのヒレのような部分(これもターンに使う)現代のボードは通常3つある(昔は一つだった)

ターン      方向転換のこと (緩やかなターンから急激なものまで)

パドル        波の崩れる沖合までクロールのようにこいで移動すること

ドルフィン       沖にパドルアウトする時に目の前で崩れる波をイルカのように潜ってやり過ごす技

レギュラー        岸から見て右から左に崩れる波

グーフィー        岸から見て左から右に崩れる波

ブレイク         波の崩れ方、崩れること

ショルダー       波の斜面の今から崩れる部分

ボトム          波の一番下の底の部分

トップ          波の一番上の部分

アウトサイド       岸から遠い沖の方

インサイド       岸に近い波打ち際の方

テイクオフ       波を捕まえてサーフボードに立ち上がる動作

カットバック      波の上を走っている最中でUターンをして戻ること

パワーゾーン      波の力が一番強い部分

ライン      波の上の自分が走るコース、そのコース取り

リップ(オフザリップ)      波のトップでの急激なターン

ドライブターン       脚力、遠心力、高度な体重移動の技術を使って、水中に深くレールを入れて、大きく加速していくターン

カーヴィング        波のトップでレールを深く水中に入れてドライブターンすること

マニューバー        波の上ですべての技術を使ってボードコントロールを行い、思いどおりの動きをすること あらゆる技の総称

メイクする         技を成功させること

エアリアル        フルスピードまで加速して、波のトップから空中にジャンプする技の総称

チューブ/バレル          波の崩れ方によっては空洞になりトンネルのような土管のような部分ができる。このチューブに入り、そしてメイクすることはとても高度な技術を必要とする

ワイプアウト      波に乗っている時に転倒してしまうこと

パーリング         テイクオフを失敗して落下すること

掘れる           崩れる波の斜面が急激に切り立って角度が直角に近くなること こういう波はテイクオフが難しい

たるい              崩れる波の斜面がとてもゆるやかな波のこと

刺さる                テイクオフの瞬間やターンの直後にノーズが波に突き刺さること

セクション         波のある一部分 または進行方向の数メートルの範囲

フローター        進行方向の波が一気に崩れるセクションで崩れるトップを無重力で滑るように横に走り抜ける技

前が落ちる        波の進行方向、自分の目の前の波が崩れてしまうことによって、それ以上横に進めなくなること。 それ以降は真っすぐ岸に向かうことしかできないので、その場でライディングをやめたりする