講師のブログ






2012年9月30日


通訳のしごと





僕にとっては英会話のレッスンを本業としているので、通訳の仕事というのはレッスンの無い土日に依頼があれば、ということにしている。 しかし去る7月はふたつの平日通訳をほぼ同時に頼まれるという状況があった。


 最初に依頼があったのは、山口県知事選に出馬していた飯田哲也氏(エネルギー学者)の選挙活動後援のイベント。 *「第4の革命」という映画で自然エネルギーへの転換の取り組みや可能性を描いた、カール A フェヒナー監督を迎え、鎌仲ひとみ監督などのゲストと飯田哲也氏が対談+映画上映+オーディエンスとの質疑応答などをするというものだった。  この映画は飯田氏の信念と一致する内容なので、氏の選挙運動を底から支える大きな力の一つとして期待されていた。   

僕の仕事はカール監督と飯田氏、そして他のゲストとの会話の通訳だった。   

 この日は木曜日だったので、通常のレッスンが詰まっていた。 しかし、飯田氏のことを僕は個人的にとても強く応援していたし、通訳することになる会話の内容そのものにもとても興味があった。  逆に言えば、今までのどんな通訳よりも個人的に気持ちが強く入るような内容だったのだ。   飯田氏が山口県知事に当選すれば、日本が大きく変わる(良い方向に)と言う人すらいたし、僕もそれを信じていたし期待していた。

なので、レッスンを他の日に変更させてもらえない か生徒さん 達にお願いしてみて、僕のわがままな理由にもかかわらず全員から了承を得られたので引き受けた。   

 そして、飯田氏の通訳依頼があった同じ日の夜に今度は東京の日本テレビから電話があった。   危険だといわれる新型垂直離着陸輸送機「オスプレイ」の岩国基地配備に関して、岩国の米軍にインタビューに行くので通訳をしてほしいという。   こちらは、飯田氏のイベントの開催日の前日に岩国に行くとのことだったが、こちらの仕事内容も個人的にはわりと今までも多少かかわってきた分野だったので引き受けたい気持ちもあった。 が、もちろん二日連続でレッスンをキャンセルすることはしたくなかったし、それに二日連続通訳というのは精神的にも肉体的にも厳しいので、日テレの方は断った。   


 結果はどうなったかというと、次の日の朝に飯田氏の後援会の方から連絡があり、通訳を探す段階でスタッフ間の連絡にミスがあったという。  僕に依頼する直前に、別のスタッフが東京の映画配給会社の専属通訳を連れて来る手配をしてしまっていたということで、ダブルブッキングになってしまった、本当に申し訳ない!とのことだった。

 こんなことならテレビの仕事を引き受ければ良かった。 



 通訳の仕事を本業として選択するのは何度か考えたことはある。

それはそれで本当に刺激的で魅力のある職業なのだ。

通常は、専門とする分野を決めて、普段の生活のあらゆる瞬間にその分野のあらゆる知識を日本語と英語と両方から勉強をする毎日を過ごすのが通訳だ。

 たとえば、実際の通訳の仕事がひと月に8日間あるとしたら、週休5日間で、毎日遊んで暮らせるのかというと、残りの22日ぐらいは、ほとんど毎日それら8日間の通訳の下調べと関連する用語の勉強。  通訳の準備をしなくても良い日でも、毎日最低8時間程度は勉強をするのが仕事だ。  最低8時間ぐらいと書いたが、これも勉強時間の初めと終わりの切れ目など無く、本当はありとあらゆる瞬間に勉強する意識が必要となってくる。   食事中であろうと、外出中であろうと、入浴中であろうと、どんな時間も通訳の仕事につながる勉強を意識する。    世界中のあらゆる個人、団体や国家がインターネットを通して繋がっている時代だからこそ、ファッションであろうが、科学であろうが、音楽であろうが、あらゆる分野で新しい情報が毎日発信されていく。  それにつれて新しい言葉や表現も次から次へと生み出される。  すべての最先端を意識して「終わりの無い勉強」を続けていく覚悟が無ければ専門性の高い通訳は務まらない。   


 もちろん英会話教室のレッスンを良い物にするということも、同様にあらゆる瞬間に授業のことを考え、研究したり、日々自分自身の英語力の維持のための勉強を怠ることは許されないし、それはどんな仕事でも一緒だと思う。   

そんな中でも通訳というのを専門にすることは、いつかまた人生のどこかの段階で、自分がそれを求める日が来るかもしれないなとは思う。  今は僕の英会話レッスンの質をどんどん上げていきたい。 まったく何も話せなかった人が、自由に会話をできる力を身につけていくのを見守ることは本当に大きな喜びを与えてくれる。   どんなスタイルであれ、全力で生きるのが好きだ。






*著名な環境活動家やノーベル賞受賞科学者、政治家らによって、これから30年以内に100 %再生可能なタイプへのエネルギーシフトが可能だということを、様々な角度から分析し、紹介する映画。